相続税について

相続税あれこれ

相続税の課税対象になるのは、土地、建物、有価証券・現金,預貯金、貴金属、書画骨董、家財など、被相続人(死亡された方)が死亡時に所有していた金銭に見積もることのできるすべての財産です。これに ①死亡保険金などのみなし相続財産 ②相続開始前3年以内に亡くなった方から暦年課税の贈与で取得した財産 ③相続時精算課税適用財産 が加算されます。そして債務や負債があればそれを差し引いた課税価格に相続税がかかります。
相続税については、近年の基礎控除額の圧縮に見られるように、課税が強化される傾向にあります。

平成28事務年度の相続税の調査の結果が公表されました。

申告書提出分の調査(申告書を提出して、調査されたもの)

実地調査件数 12,116件
申告漏れ等の非違件数 9,930件
非違割合 82.0%
申告漏れ課税財産 3,295億円
調査1件当り申告漏れ課税価格 2,720万円
調査1件当たりの追徴税額 591万円

申告漏れ相続財産の内訳は、現金預貯金が1,070億円と最も多く、続いて有価証券535億円、土地383億円の順です。

無申告事案の調査(申告書の提出がなく、調査されたもの)

実地調査件数 971件
申告漏れ等の非違件数 751件
非違割合 77.3%
申告漏れ課税財産 886億円
調査1件当り申告漏れ課税価格 8,914万円
調査1件当たりの追徴税額 708万円

無申告事案は、申告納税制度の下で自発的に適正な申告・納税を行っている納税者の不公平感を損なうものとして積極的に調査されています。

〇 申告書提出分の申告漏れで、現金預貯金が1070億円、有価証券が535億円となっていますが、その多くは「名義預金」「名義株」の申告漏れと想定されます。1件当たりの追徴税額が、591万円とはびっくりしました。
〇 無申告事案分の調査は、相続税には潜在的に無申告者が多数存在すると思われるため、これからますます厳しく行われると思います。1件当たりの税額の大きさには驚きです。

相続税の申告書を提出、、、、税務調査は?

税務署は日常的に資料収集に努めています。我々が想像する以上にいろいろな資料を収集しています。
相続税の申告書が提出されると最初に署内に蓄積された資料に基づいて机上で提出された申告書の審理を行います。解決できないものや、疑問点や申告漏れが想定されれば、家族名義を含め関係先へ文書による照会を行います。その照会の回答によって疑問点が解消されれば調査は行われません。特殊なスキームや特に大口の事案は別扱いです。
疑問点が解消されない事案について、実地調査が行われます。ですから税務署が調査に来た時点で、税務署側が抱いている問題点は明らかです。
税務調査で必ず問題になるのが、「名義預金」「名義株」です。申告財産の計上については名義に関わらず実質で所有者を判断しないと、調査で嫌な思いをします。

名義預金

口座名義は妻や子供の名前ですが、亡くなった被相続人である父親が作成した預金がよくあります。 証券会社の口座も同じです。 妻名義、子供名義だから申告しなくていいと判断して、申告財産に計上しないと、税務調査で実質的には亡くなった父親の財産と認定されて相続財産に計上されます。
相続財産か否かの判断は、その名義に関わらず実質で判断する必要があります。名義預金や名義口座についていえば、その現金の出所(誰の稼いだ金で作成された口座なのか)、その口座の印鑑・通帳は誰が管理しているのか、その口座内の資金を名義人は自由に使うことができるのか、利息や配当は誰が享受しているのか、その口座の存在を名義人は知っているのか、、、、。これらを総合的に判断して実質的な所有者を判断する必要があります。

不明出金

亡くなった被相続人の銀行口座から大きな出金がある場合には、税務調査で親族への贈与が疑われます。株の購入資金や家の修繕資金というように資金使途がはっきりとわかっていればいいのですが、曖昧な場合には厳しく追及されます。死亡時期が迫ってくると、被相続人の口座から現金が流失していくのは自然です。何に使ったのか、誰が引き出したのか、引き出した預金のうち相続開始時にいくら現金として残っていたのかを明確にしておく必要があります。
また、被相続人の預金から相続人の預金へ資金が移動していることもよくあります。貸したお金の精算であれば問題ありませんが、理由のないものは「贈与」や「預け金」として相続財産に取り組まれます。
被相続人名義の口座から行き先不明の出金が多い事案は、調査選定される可能性が高いと言えます。

先代名義

先代名義の財産も申告から漏れやすいのが実情です。
名義人が死亡していても名義変更されていない物件のことを、「先代名義」の物件といいます。預貯金や株式であれば、財産性が高く換金も容易ですので「先代名義」はあまり問題にはなりませんが、先代名義の「建物」は、最近社会問題化するほど多くなっています。
被相続人Aが死亡しました。Aの長男Bは相続税の申告書を作成していますが、Aの自宅敷地に大きな古い家屋があり、登記名義は20年前に死亡しているAの父親の甲(Bの祖父)のままです。Aの相続税の申告のためにこの古屋の所有者を決める必要があり、甲の相続人である叔父、叔母、Aの代襲相続人であるBらが、この古屋の遺産分割協議をする必要があります。厄介な問題です。

相続税の申告と納税の期限は、相続開始を知った日から10月以内です。
当事者である被相続人は死亡しているわけですから、残された遺族は財産の把握や資料収集で苦労されることでしょう。
財産の把握は場合によっては死後4か月ぐらいまでには、行いたいものです。
相続人に非居住者がいる場合は、相続財産に中に有価証券等が1億円以上あると国外転出課税制度の適用があるため注意が必要です。それまでに遺産分割が成立していることはまれでしょうから、とりあえず法定相続分でその非居住者が有価証券を取得したとみなして、その部分について被相続人がみなし譲渡課税されます。
被相続人の譲渡ですから、相続人全員で準確定申告することになります。

通常は、相続後4~5か月してから財産の把握に着手するようです。プラス財産、マイナス財産の確認を行って、課税価格が基礎控額を確実に下回るようなら相続税の申告は不要です。課税価格が基礎控除額ギリギリとか基礎控除額を確実に超えるようなら、専門家である税理士に財産評価や申告書の作成を依頼する必要があります。

小規模宅地等の特例

相続税の特例で大きな節税効果があるのが、この小規模宅地の特例です。一定の要件を満たす居住用宅地なら330㎡までについて80%の評価減、一定の要件を満たす事業用宅地なら、400㎡までについて80%の評価減、一定の要件を満たす貸付事業用の宅地の場合は、200㎡までについて50%の評価減が可能です。この中の2種類以上を選択する場合従来は調整計算が必要でしたが、改正により特定居住用宅地と特定事業用宅地については、完全併用が可能になりました。
つまりそれぞれ条件を満たす特定居住用宅地と特定事業用宅地がある場合、最高面積730㎡までについて80%の評価減が可能となりました。 これは同族会社の関係者や自営業者の方々には大きなメリットです。
このように小規模宅地の特例の節税効果は大きいのですが、どの宅地にこの特例を適用するのかについての相続人全員の同意が必要ですし、その宅地について分割協議か成立していないと特例適用はありません。

配偶者の税額軽減

相続・遺贈で配偶者が財産を取得した場合、配偶者の取得した財産の価格が1億6000万円以下か、課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を掛けた金額以下の場合、相続税の計算上その全額は控除されて納税額は発生しません。但し遺産分割協議が成立していないと適用できません。

「小規模宅地の特例」と「配偶者の税額軽減」のふたつは、相続税の中で最も節税効果がある特例です。
しかし申告期限までに分割協議が成立していないとこれらの特例は適用できませんから、その場合はとりあえず特例を適用しないで多額の税金を支払うことになります。その際申告書にに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、遺産分割が成立してから4月以内に更正の請求をすれば、これらの特例を受けることができて、納めすぎた税金の還付が受けられます。
更正の請求で納めた税金は戻されますが、いったんは多額のお金が必要となります。このことからの「円満な相続」は最高の節税と言えます。

節税対策

節税対策についてよく聞かれますが、毎年税法改正がされて、相続時には現行法ではなく死亡時の法律が適用されるため、決定的な対策はありません。
暦年課税の贈与で子や孫へ毎年現金を贈与するのが一番簡単で確実な方法です。子供が2人いて、それぞれに配偶者と2人の子供がいる場合、受贈予定者は計8人です。
贈与税の基礎控除額110万円の現金贈与をすると、1年で880万円、5年で4400万円、10年で8800万円の贈与が、無税で可能です。その代り印鑑・通帳はそれぞれの受贈者に交付し、自由に資金の使える状態にしておく必要があります。基礎控除後の課税価格が200万円以下の税率は10%ですから、310万円の現金を贈与して20万円の贈与税を支払う方法で贈与すると、比較的短期間に多額の贈与が可能になります。

贈与税には「贈与税の配偶者控除の特例」「住宅取得資金の非課税特例」「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税特例」「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税特例」があり、これらを適宜活用することで一定の節税成果は得られます。
また現預金を不動産等に変形させるのも節税対策です。現金100万円の相続税の課税価格は100万円ですが、100万円で購入した時価100万円の土地の課税価格は通常は80万円です。
更地にアパートを建築することも節税対策としてよく行われています。現金1億円の課税価格は1億円ですが、そのお金でアパートを作ると完成したアパートの固定資産税評価額は6,000万円。ここに入居者が入ると借家権30%が控除されて建物価格は4200万円になります。また、そのアパートの敷地も自用地評価から貸家建付地評価に減額されます。
現金預貯金を生命保険金に変形させる方法も一般的です。現金1000万円はそのまま相続税の課税価格1000万円ですが、これを保険料として一時払いの生命保険に加入すると、相続人が2名の場合、生命保険料の控除額は 500万円×2人=1000万円ですから、同じ現金1000万円でも死亡保険金に変形させると相続税は課税されません。

節税は現在の法律によって計算されたものであり、相続発生時に法律が改正されていれば全く意味がありません。節税も大切ですが「円満な相続」に力点を置いて、大切な財産の承継を図るべきでしょう。

遺贈

社会貢献への関心の高まりと、生涯未婚率の増加で、遺贈によって財産を公益法人へ寄付することに関心が集まっています。現金の寄付なら簡単ですし、受け入れ先がユニセフや日本赤十字社等ならスムーズに行われるでしょうが、世話になった社会福祉法人に土地を寄付したいとか、神舎仏閣の隣接地を境内地として寄付したいとなると手続きは困難をきわめます。また、最近、一人暮らしのお年寄りから詐欺まがいの手口で「公益法人を語る団体」が多額の遺贈を受けて、社会問題化しています。公益のために役立てたいが、どこの公益法人に寄付していいのかご不明の場合には、ご希望に沿う団体を当事務所でご紹介させていただきます。寄付するかしないかはご自由です。
個人が法人に土地や株式を寄付する場合、寄附した個人に所得税が課税されるのが今の税制です。しかし一定の要件に該当すると譲渡所得が非課税となります。当事務所ではこのような個人の善意を活かすための租税特別措置法40条の承認申請にも対応いたしております。

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